花が終わった胡蝶蘭は、どこへ行くのか。回収した鉢の「その後」を全部お話しします

こんにちは、Orchid Bloomの緑川藍です。
「花が終わった胡蝶蘭って、回収したあとどうしているんですか?」
サブスクを始めてから、お客様にも同業を目指す方にも、いちばんよく聞かれる質問です。

先に答えを言うと、行き先は「二度咲きを待つ」「株を育て直す」「資材だけ残して手放す」の3つです。
この記事では、それぞれにかかる時間と手間、再販が難しい理由、処分のルールまで包み隠さずお話しします。

回収した胡蝶蘭の行き先は3つあります

Orchid Bloomでは、定期的に新しい鉢をお届けして、花が終わった鉢を引き取っています。
引き取った鉢は農園に戻し、まず1鉢ずつ葉と根の状態を見ます。
ここでの見立てによって、その後の道が分かれるんです。

花茎を切って、二度咲きを待つ

葉にハリがあって根もしっかりしている株は、花茎を途中で切って、もう一度花を待ちます。
熊本の生産者である宮川洋蘭の花後の切り方ガイドでは、下から4〜5節目あたりを残して切る方法が紹介されています。
ただ、同じ記事には必ず咲くわけではないとも書かれていて、開花までの期間も数か月から1年程度と幅があります。

祖父はこれを「株に借金をさせる切り方」と呼んでいました。
体力のある株にしかさせてはいけない、という意味です。
切る前に葉を指でそっとつまんで、厚みと張りを確かめるのが祖父のやり方でした。

根元から切って、株を育て直す

葉が少ししんなりしている株や、花茎が変色している株は、花茎を根元から切ります。
花に回していた力を、葉と根の回復に向けてあげるためです。
宮川洋蘭の記事でも、株が弱っているときは無理をせず、根元から切って回復を優先するよう勧められています。

こちらは新しい花茎が伸びるところから始まるので、次の花までは二度咲きよりずっと長くかかります。
そのあいだも、温室のスペースと暖房代、水やりの手間は毎日かかり続けます。
「育て直す」と口にするのは簡単ですが、実際には場所とお金を預ける覚悟がいる選択なんです。

資材だけ残して、株は手放す

根腐れが進んでいる株や、病気が疑われる株は、残念ですが手放します。
このとき、鉢や支柱は洗って次に使い、株と水苔だけを処分に回します。

起業したばかりのころの私は、全部の株を救おうとして、温室を弱った株でいっぱいにしてしまいました。
元気な株にまで病気が広がりかけて、祖父にずいぶん叱られたのを覚えています。
救えない株を早めに見極めることも、ほかの株を守る仕事のうちだと、そのとき学びました。

3つの行き先を表にまとめるとこうなります。

行き先向いている株次の花までの目安かかる負担
二度咲きを待つ葉にハリがあり、根が元気数か月〜1年程度株の体力を使う
根元から切って育て直すやや弱っている、花茎が変色している二度咲きより長い場所と管理費が長くかかる
資材だけ残して手放す根腐れ、病気の疑いがあるなし処分の手間と費用

「再生してもう一度売る」が難しい理由

「育て直してまた売れば、仕入れがタダになるのでは?」
広告代理店にいたころの私なら、きっと同じことを考えたと思います。
ところが実際にやってみると、そんなにうまい話ではありませんでした。

二度咲きの花は、最初の姿には戻りません

生産者さんが出荷する胡蝶蘭は、花の向きや並びを支柱で丁寧に整えて仕立てられています。
一方で二度咲きの花は、残した節から出た枝に咲きます。
私の経験では、輪の数が減り、並びもなかなかそろいません。

自宅やオフィスの片隅で楽しむぶんには、十分にきれいです。
でも、お祝いの席に贈る商品として出せるかと聞かれたら、正直なところ出せません。
胡蝶蘭は「整った姿」そのものが価値になっている花なので、ここはごまかしがきかないんです。

病気や害虫を持ち込むリスクがあります

もう1つの壁が、衛生面です。
帝人ソレイユが運営するPlanet’s Hug Orchidの胡蝶蘭お引き取りサービスは、引き取った株を再生して再販売することはしない、とサイト上ではっきり説明しています。
理由は、生産ハウスやお届け先に病気や害虫を持ち込むリスクがあるからです。
同社では植物部分を焼却して灰を野菜づくりの土壌改良に使い、使える鉢は洗ってリユースし、金属の支柱は専門業者に売却しているそうです。

お客様のオフィスで数か月を過ごした株が、どんな環境に置かれていたのかは、私たちには分かりません。
Orchid Bloomでも、戻ってきた株は出荷用の株とは別の場所で管理しています。
育て直した株は商品にはせず、私たちの事務所で咲かせるか、希望されたお客様にご自宅用としてお譲りするだけにとどめています。

「もったいない」だけでは続きません

私がこの仕事を始めたきっかけは、オフィスで枯れていく胡蝶蘭を見て感じた「もったいない」でした。
その気持ちは今も変わっていません。
ただ、全部を救おうとすれば、場所と費用がふくらんで事業そのものが回らなくなります。

だから今は、株として生かすものと、資材として生かすものを、回収した時点で分けるようにしています。
鉢や支柱を次の一鉢に使えれば、それも立派な「もったいない」への答えになります。

手放すときに知っておきたい、ごみの区分

株を手放すと決めたあとにも、考えることがあります。
ここは私自身、起業してから慌てて調べた部分なので、これから始める方にはぜひ先に知っておいてほしいです。

事業で出たものは、家庭ごみには出せません

東京二十三区清掃一部事務組合の事業系一般廃棄物の説明によると、廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に大きく分かれます。
会社や商店が事業活動で出すごみのうち、産業廃棄物に当たらないものが事業系一般廃棄物です。
どちらも、出した事業者が自分の責任で適正に処理する義務があり、自分で処理できないときは許可を受けた業者に委託することになります。

自宅の一室で小さく始めた場合でも、事業として出たものであれば考え方は同じです。
「少しだから家のごみと一緒に」というわけにはいきません。

鉢や支柱と、株は分けて考えます

胡蝶蘭の鉢は、ばらしてみると意外なほど多くの素材でできています。

  • 株と水苔
  • プラスチックの鉢やポット
  • 陶器の化粧鉢
  • 金属の支柱やワイヤー
  • ラッピング、リボン、立て札

先ほどの説明ページでも、廃プラスチック類は産業廃棄物の例として挙げられています。
生花店の花弘が出した回収サービスのプレスリリースにも、花器などが産業廃棄物になってしまい、処理が難しいという事情が書かれていました。

どの素材がどの区分になり、どう出せばいいかは、自治体によって扱いが違います。
私は事業を始める前に確認しておかなかったせいで、最初の回収のあと、洗った鉢と処分待ちの株を前に途方に暮れました。
開業前に、地元の自治体の窓口か許可業者に一度聞いておくことを強くおすすめします。

回収まで設計すると、売り方が変わります

ここまで読むと、回収は手間ばかりに見えるかもしれません。
でも私は、この「手間」こそが胡蝶蘭ビジネスの差別化になると考えています。

回収を前面に出す事業者が出てきています

花弘は2022年11月から、花後の無料回収が付いた胡蝶蘭「reRan」を販売しています。
プレスリリースによれば、回収した花器やワイヤー、水苔などは消毒と洗浄をして再利用するそうです。
始めた背景には、もらった胡蝶蘭を回収に来てほしいというお客様の声が多かったことがあると書かれています。

先ほどのPlanet’s Hug Orchidも、他社で買った胡蝶蘭を含めて1鉢3,300円(税込)で引き取っています。
対象は東京23区などまだ一部のエリアですが、お金を払ってでも引き取ってほしい人がいる、という事実は見逃せません。
贈られた側の「花が終わったあとが大変」は、それだけ切実な悩みだということです。

これから始める方が最初に決めておくこと

私は売る仕組みばかり考えていて、戻ってくる鉢のことを後回しにしていました。
同じ遠回りをしないために、開業前に次の5つを決めておくと安心です。

  • 回収をするのか、しないのか
  • 回収した株のうち、どこまでを育て直すのか
  • 育て直す場所を、出荷用の株と分けられるか
  • 鉢や支柱を洗って再利用する手順
  • 処分を頼む先と、その費用

全部に完璧な答えを用意する必要はありません。
ただ、回収の費用を料金に含めるのか、別にいただくのかだけは、最初に決めておいたほうがいいです。
あとから値上げをお願いするのは、思っている以上に言い出しにくいものですから。

まとめ

花が終わった胡蝶蘭の行き先は、二度咲きを待つか、根元から切って育て直すか、資材だけ残して手放すかの3つです。
どれを選ぶかは、葉と根の状態を見て1鉢ずつ決めています。

育て直した株をもう一度商品にするのは、姿がそろわないことと病害虫のリスクがあるため、私はおすすめしません。
その代わり、鉢や支柱を洗って次に生かすことと、処分のルールを事前に確認しておくことは、どなたでも今日から準備できます。

胡蝶蘭ビジネスは、お届けした日がゴールではありません。
花が終わったあとまで面倒を見られる人が、長く選ばれていくのだと思います。
これから始める方は、ぜひ「戻ってくる鉢」のことまで一緒に設計してみてくださいね。